2013年2月18日月曜日

ゲーミングデバイスとしてのAndroidの未来

2013年に入り、PlayStation4の年内発売の報道が複数のメディアから流れている。本格的な発表は今月20日に行われるPlayStation Meeting 2013で行われると思われ、にわかにゲーム業界が賑わっている。昨年は任天堂からWiiUが発表されている。また次世代Xboxの噂が流れるなど、コンソール機の復権に注目が集まっている。

そのような2013年、筆者が一番注目しているのは「ゲーミングデバイスとしてのAndroid」だ。何しろAndroidをOSとして搭載したゲーム機は、今年発売されるものとして既に話題になっているものが3つもある。Kickstarterで華々しく資金を調達したOUYAとGameStick、さらにNVIDIAが開発を手がけているProject SHIELD。

その他にもゲームの周辺機器やコントローラーを含めると、Android関連のゲーミングデバイスは山ほどある。最終的な仕上がりはわからないが、ゲーミングデバイスがこれほど多種多様に生まれてくる様子には正直、ワクワクする。(おそらく、一部のハードは単なる珍品としてコレクターの棚に飾られることになるだろうが。)

この「Android搭載のゲーミングデバイス」の豊作という自体は、ある程度は予想されたことだ。基本的にオープンソースのモバイルOSであるAndroidは、オープンアーキテクチャによって市場を席巻してきたPC/AT互換機と同様の展開をみせる。要するにiOS端末がMacならば、Android端末はWindowsであるのだ。(他方、Windows Phoneがどこを目指しているのかは、まだ良くわからない。)

AppleはiOS端末をゲーミングデバイスとしてアピールしてきたのだが、GoogleもまたAndroid端末をゲーミングデバイスとして売りだそうとしてきた。しかしながら、2013年現在、ゲーミングデバイスとしてのAndroid端末の魅力は、iOS端末に比べると著しく低い。その理由について、以下で簡単に説明するとともに、これらの問題点をOUYAやGameStick、Project SHIELDといった「Android搭載のゲーミングデバイス」が克服できるかどうか考えてみたいと思う。

フラグメンテーション!

ゲーミングデバイスとしてのAndroid端末の一番の欠点は、「フラグメンテーション」という言葉で端的に表現される。

2012年の3月9日にMika Moblieの書いたAndroidから撤退するというブログ記事は、日本でもニュースになった。そもそも二人組の高校生から出発したMika Mobileのようなインディーデベロッパーのブログが、国際的なニュースになるというのも、当時のAndroid市場の牧歌的な雰囲気を反映しているようで、現在の状況はかなり異なっている。

だが、少なくともこの段階でAndroid市場における「フラグメンテーション」は問題化されており、実際にMika Moblieは異なるOSやGPUに対処するのは採算に合わないと嘆いている。さらに日本のAndroidのマーケットでは、ネイティブアプリのゲームが徐々に減っていき、ソーシャルゲームをやるための「名ばかりアプリ」が爆発的に増えていった。

OSと端末の多様性という意味では、現在もAndroidの「フラグメンテーション」は進行している。それはオープンソースのOSであるAndroidにとっては、ある程度、避けがたいことだ。しかしながら、OUYAなどのAndroid搭載のゲーム専用デバイスが登場したならば、話は別だ。デベロッパーはOUYAならOUYAユーザー、Project SHIELDならProject SHIELDユーザーに向けてゲームをリリースすれば良い。他の端末のOSのバージョンやGPUの違いに気にすることなく、ゲーム開発に集中できるだろう。

もちろん、この解決はAndroidの持っている潜在的なユーザーの大部分を失うというデメリットを持つ。しかしながら、その「潜在的なユーザー」には、有料ゲームにお金を払わないカジュアルなゲーマーから海賊行為を行なう「悪しき」ゲーマーが含まれている。デベロッパーとしては、海千山千のAndroidユーザーを相手に商売するよりは、より有料な顧客を持つ「ゲーム専用デバイス」のユーザーを相手にしたほうが幸せになるだろう。

貧相なマーケットであるGoogle Play

「フラグメンテーション」は、主にデベロッパー視点から見た時のAndroidの問題点だ。ユーザーから見た時のゲーミングデバイスとしてのAndroidの問題点は、マーケットの貧弱さにある。というのも、空き時間があるから何か面白いゲームでも楽しもうかと思いたち、Google Playを見たとしても、あなたが本当に面白いゲームを発見する可能性はかなり低いからだ。

Androidのゲームのレビューをしている私は、心底からGoogle Playの貧相さを思い知っている。まともに機能していないランキング、「新着ゲーム」ではなく「人気の新着」というよくわからないカテゴリー、そしてソーシャルゲームにユーザーを動員するためだけの名ばかりアプリの数々。

少なくともiOSではアプリストアのランキングを見るだけで、お気に入りのゲームを1つ2つ探してくることはできる。Androidでは、そうはいかない。たとえ、お気に入りのゲームを発見したとしても、今度は「フラグメンテーション」に阻まれ、あなたの端末やOSには対応していないかもしれない。

もちろん、世界の検索エンジンであるGoogleなのだから、iOSのGenius機能のように、今後はユーザーの嗜好を反映した高機能のインタレストマッチングを搭載してくるかもしれない。また、Androidのエコシステムが浸透していけば、ユーザーはお好みのレビューサイトなどから情報を得ることもできるだろう。(逆を返せば、Androidゲームのレビューサイトはこの貧相なマーケットにこそビジネスチャンスがあるのだ。)

それでも、あなたが本当にゲーマーであるならば、Google Playからゲームを探すよりもAndroid搭載のゲーム専用デバイスを買ったほうが、効率が良いだろう。既にOUYAには、大手デベロッパー/パブリッシャーからインディーデベロッパーまで魅力的なタイトルが並んでいる。まったく知らないゲームであっても、OUYAからリリースされるタイトルがブラウザベースのソーシャルゲームであるようなことはないだろう。

 ゲーミングデバイスとしてのAndroidの可能性

以上、ゲーミングデバイスとしてAndroidの問題点をデベロッパーとユーザー視点からごく簡単に見てきた。Android搭載のゲーム専用デバイスは、これらの問題点を部分的に解決してくれるように思える。

しかし根本的な疑問として、そもそも「そこまでしてAndroidのゲームをやりたいのか?」という問題が残っているように思える。確かにそうだ。ゲーム専用コンソールならば、できたてホヤホヤのWiiUや今年発売されるだろうPlayStation4、次世代Xboxなどを多くのゲーマーは選ぶだろう。実際に専門家たちはOUYA、GameStick、Project SHIELDなどのAndroid搭載のゲーム専用デバイスはニッチ市場に留まるだろうと予想している。

だが他のメジャーなコンソールと比べて、Androidデバイスのメリットも少なからず存在する。OUYAならば、その課金モデル(F2Pからfree-to-tryと名称が変化したが)、Project SHIELDならば、Windows用ゲームへの対応など。さらに、Androidというオープンプラットフォームが持つ最大のメリットとして、デベロッパーの参入障壁の低さだ。

総合的に見れば、積極的にインディーゲームを追うようなゲーマーにとって、これらの「ゲーミングデバイスとしてのAndroid」を可能にしてくれるデバイスは魅力的に映る。OSのバージョンに頭を悩ますこともなく、マーケットが名ばかりアプリで侵食されることもなく、有名無名のゲームをプレイできるのならば大歓迎だ!(そうすると、今度はSteamのようなPCゲームのプラットフォームと競合するわけなのだが…。)