2012年7月31日火曜日

ゲームとお金が出会う時: 日本と西洋における新たなマネタイズシステム

こ十数年でゲーム業界は大きく変わった。テクノロジーの発展は、ダウンロード販売やモバイルゲーム/オンラインゲームの普及を促進させるとともに、新たなビジネスのフィールド、可能性、手法をもたらし、急激にマネタイズ方法は広がった。ゲームをプレイするために、ゲームソフトを購入し、あとは心行くまでプレイする、あるいは月額料金を支払う、といったシンプルなマネタイズだけではもはやゲームのマネタイズを語ることはできない。一例をあげるならば、日本で爆発的に流行したモバイルゲームは81パーセントが無料でありながら、2011年時点で80億ドル相当の巨大市場を確立している。この衝撃的な数字の裏には、新しいマネタイズが潜んでいるというわけだ。






  
$1から最大$78,000までのDLCコンテンツを用意し、人々がゲームにかけることのできる上限金額を査定するPeter Molyneuxの実験ゲーム『Curiosity』の発売を前に、異なる文化的コンセプトがゲームマネタイズに影響を及ぼすのか否かについて考えてみたいと思う。

基本プレイ無料ゲームとその発展

近年日本で成功を収めているのは、基本プレイは無料だがアイテムについては課金する、というタイプのマネタイズだ。もはや詳しく説明するまでもないだろうが、プレイ自体は無料で楽しめるものの、スタミナ回復アイテムや強力な武器を入手する際に料金が発生する。課金してもなお手に入りにくいアイテムもあり、レアアイテムが実際に売買されていることさえある。

これだけ流行しているシステムを、ゲームメーカーがコンシューマにも積極的に取り入れるのは、当然だろう。 20126月には、Playstation Networkから無料でゲームをダウンロードできるアイテム課金型コンシューマゲーム『機動戦士ガンダムバトルオペレーション』が登場した。オンラインで購入可能なアイテムやコンテンツを選択することが可能だ。

これは欧米でも広く受け入れられており、『World Of Warcraft』がこのシステムで莫大なアイテム市場を生み出した。あまりの過熱ぶりに、中国や他の発展途上国では、アイテムを販売することで実際に収入を得ようとする人が大量に続出し、ついにはそれを実際に職業としてしまう人が現れた。

開発したBilizard社は、その過熱ぶりに対し、『Diablo III』でアイテムの現金売買をベースとしたシステムを、なんと自らの手で導入した。世界中のプレイヤーは、このようなシステムでは豊かな人ばかりが有利になってしまうとクレームを寄せたが、欧米ではこのシステムは続行されている。

アイテム課金方式は、豊かな人が有利になるだけでなく、際限なくお金を払えてしまうが故に、ゲームに夢中になり過ぎた人がレアアイテムを獲得するために莫大なお金を注ぎ込んでしまう危険性を秘めている。中には他人に借金をしてまで課金を続けた人もいるという。韓国では現金オークションのシステムが排除されたり、日本ではレアカードやレアアイテムを獲得するために課金を続けさせる「ガチャ」問題に関する議論が巻き起こっていたりと、風当たりが強いせいか、『Diablo III』もアジア圏ではこのシステムを導入していない。

このままアイテム課金を続けるのならば、やはり使用できる現金をある程度管理するか、トレードなど受け皿を用意するなど、プラットフォーム側での配慮が必要になるだろう。いずれにせよ、欧米においてもアイテム課金型ゲームの危険性について議論されるのは時間の問題だと思う。

3D チャットimvuなどでは新しい試みが取り入れられており、現金売買ではなく、公式サイト上のカタログ商品からクレジットで購入することや、アンケートやレビューなどのマーケティング活動に協力することで、洋服や家具などのデジタルコンテンツが獲得できるようになっている。ポイントサイト的な発想がゲームに取り入れられ、今後はゲームがより広告媒体としての側面を強めていくのかもしれない。

ストレージレンタル

西洋では1980年代前半のアタリショック、さらにはゲーマー間の交流の場としてオンラインゲームが台頭してきたことにより、進化が止まっていたアーケードゲーム。一方国土の狭い日本では、ゲーマーの交流の場として脈々とゲームセンターが進化し続け、欧米ではあまり浸透していない日本独自のマネタイズシステムが進化してきた。それが、ストレージレンタルだ。

最近のアーケードゲームは、一度プレイして終わりではなく、自分用のストレージスペース(記憶領域)に個々のデータやキャラクターを保存することができる。つまり、その「ストレージ」を購入する必要があるわけだ。これはスペースに対してレンタル料を払う、という極めて現実的なシンプルな発想に基づいており、ゲームメーカーにとって比較的安定した収入源となっている。例としては鉄拳6があり、 最近西洋への進出を果たした。今後、海外のゲームセンターでもこのあり方は受け入れられていくのかもしれない。
このシステム自体は欧米でも広く存在するが、やはりアーケードではなくオンラインゲームで使用されていることがほとんどだ。そのはしりとなったのが『Second life』である。ここでモノを買ったり借りたりできるのは、この考え方が基礎にある。あいにく、ここ最近『Second Life』の人気は劣っているものの、新たなマネタイズ方法を生み出したパイオニアであることには変わりない。

ゲーム内広告

 Angry Birdsは多くのモバイルゲームプラットフォームで無料提供されているにも関わらず、月に100万ドルもの収益を得ている。それを実現するのがゲーム内広告だ。スマートフォンユーザーであればモバイルゲーム内で数々の宣伝広告が登場するのは、誰しもが知っているだろう。だが、このシステム自体は、続編の広告を行ったAdventureland1978年発売)から存在するものであり、目新しいものではないが、スマートフォンの無料アプリの普及とともに、一気に浸透した。ゲームが有料ではなく無料であるがゆえに、プレーヤーはこの激しい広告の嵐を受け入れてくれる。

 これに比べ、パソコンやコンソールで登場する広告はさほど激しくない。しかし、ゲーム内広告はパソコンやコンソール上でも着々と進化を遂げている。日本では、モンスターハンターシリーズにおいて、様々な雑誌媒体や作品などとコラボレートし、スペシャルクエストなどを配信している。これも一種のゲーム内広告と言えるだろう。

海外では、特にスポーツシミュレーションゲームで非常に多くの広告を発見できる。というのも、スタジアムは現実のものと同じ広告で彩られており、ユニフォームには実際のスポンサーの名前やロゴが記されている。

特に成功を収めたのが、Electronic Arts 社のオンラインゲームMadden, NASCAR, Burnout Paradis等で行われた2008 Barrack Obama campaignである。アメリカ民主党は、政治的メッセージを若い支持層に伝えるために、非常に大きな額を支払ったという。一度はゲーマーたちから批判を浴びはしたものの、ついにはこのキャンペーンは受け入れられた。

政治とゲームは一見相性が良くないように思えるが、EAのスポーツゲームのモットーは、EA SPORT, it’s in the game!”というものであり、これは『現実のスポーツで起こることは、すべてEAのスポーツゲーム内で体験できる』、といった内容だ。ゲーム内で現実のキャンペーンが行われたというのは、EAのゲームの精神に一致するものなのだ。

ゲーム内広告を手掛ける際には、プレイヤーらはゲームの世界に没頭していることを忘れてはならない。もしゲームの背景がニューヨーク州のタイムズスクエアであるならば、プレイヤーは企業の広告を受け入れてくれるであろう。リアリティを増し続ける海外AAAタイトルにおいては、今後あっと驚くゲーム内広告が現れるのは間違いないだろう。

まとめ

ゲームの革新とともに新たなマネタイズシステムが多数登場し、日本で生まれたものが世界へ、逆に海外で生まれたものが日本へと、新たなマネタイズシステムが生まれては、世界中で試されていく。しかし、前述の「コンプガチャ」やアーケードに見られるようなゲーム文化の違いによって、特定の文化圏でしか効果を発揮しないマネタイズシステムも存在する。

あとどれほど店舗販売やオンラインゲームの月額課金などの昔ながらのマネタイズシステムが生き残るのかはわからないが、もし業界人の予想通り、クラウドゲームによって8代目コンソールを最後にゲームコンソールが滅びてしまうとすれば、新たなマネタイズシステムはさらに重要性を増すだろう。あるいは、最新のオープン・ソースコンソールOuyaの登場によって、アイテム課金型ゲームが市場を斡旋し、ゲーム業界に大幅な戦略変更が余儀なくされる可能性も大いにある。この件については、また別の機会にお話しようと思う。