2012年3月5日月曜日

翻訳とゲーム本来の質



私はゲームを通して、翻訳業界に足を踏み入れていくことになりましたが、翻訳業界の人間である前に一ゲームプレイヤーとして、ゲームローカライズに関して、お願いがございます。それは、「翻訳によって、ゲーム本来の質を落としてほしくない。」というものです。
私は、これまでに日本のゲームを始めとし、ローカライズされたゲーム、もしくはされていないゲームなど様々な作品をプレイしてきました。この時に、非常に勿体無いと感じてしまうのが、ゲーム自体は面白いものであっても、翻訳の質が悪いがために、その作品の良い部分を殺してしまっている、というものです。この傾向は特にRPGやテキストタイプのゲームに多いです。誤字脱字はもちろんあってはならないものですが、それ以上に注意すべきなのは誤訳です。これは致命傷と言えるほど、その作品の雰囲気を壊してしまいます。

過去に私も翻訳されたゲームをしながら、日本語と英語を並べて確認したことがあります。その時の経験では、アクションゲームストラテゲームなど基本的なルールを説明するだけで、それ以外にはあまり文字を必要としないゲームは、最初に翻訳された段階でもほぼ修正点はないのですが、RPGやテキストタイプのゲームは、作品によっては誤訳や意味の通らない日本語が多いです。
確かにRPGなどのテキストが多く、更にその中にゲームの用語が多い場合、ローカライズは非常に難しいものになってしまいます。ですが、そのゲームを実際に遊ぶのは、あくまで事前に情報をほとんど持たないプレイヤーなのです。彼らには英語の情報など基本的にはなく、前情報のないプレイヤーが意味の通らない日本語を目の当たりにしたら、どう思うでしょうか。
間違いなく、その作品に対する評価は落ちるでしょう。評価が落ちれば、当然その作品に興味を持つプレイヤーは減り、正当な評価を受けられずに終わってしまうでしょう。時には変な翻訳が話題になることはありますが、通常、ゲームプレイヤーはそれを期待してゲームを購入しているわけではありません。興味があるけど、他国の言葉だと敷居が高いと考えているからこそ、日本語版を購入するのです。この時、プレイヤーの方々が求める品質は多少のブレはあれど、最低でも日本語が気にならない程度だと思います。不自然な日本語が少なければ少ないほど、混乱も減りますし、何よりゲームをそのまま楽しむことができます。細かいレベルで考えていけばいくほど翻訳の難易度は上がりますが、作品の質を落とさない、『その作品の作風に合った翻訳』を目指していきたいものです。

なので、ゲームローカライズを引き受ける以上は、翻訳者はただのゲーム翻訳者ではなく、その作品に別言語という形で、命を吹き込む開発者の一人であるということを忘れないで頂きたく思います。