2011年10月31日月曜日

欧米で流行する、MOD(ユーザー生成コンテンツ)文化とは

現在、欧米でMOD文化と呼ばれるユーザー生成コンテンツが流行しているのをご存じでしょうか。これは、ゲーム開発者ではなく、ゲームファンがそのゲームデータのエンジンを使ってゲームを自由に創りかえるもので、語弊はあるかもしれませんが、平たく言うと改造データです。MODを導入すれば、ステージデザイン、テクスチャ、アイテム、さらにキャラクターにいたるまで自分の好きに創りかえることができ、さらにはそれをユーザー皆で共有し、利用することができます。例えるなら、モンスターハンターであなたが好きなフィールドを創り上げ、そこに好きなモンスターを自由に創造して棲息させ、まったく新しいクエストを世界中に配信することができるというわけです。

MOD自体は決して新しいものではなく、10年以上前からゲーマーを魅了してきたゲームプレイの一つのトレンドでしたが、最近ではネットを介してステージエディターやその他MOD専用のソフトを配布できるようになったこと、さらには開発者の側も積極的にMODに参加するようになったこともあり、自分だけのゲームコンテンツをデザインし始める「素人」ゲーマーがますます増えているのです。


MODはプレイヤーをゲームデザイナーにする

 日本でも、「カスタマイズ」のブームはかなり前から起こっています。日本のプレイヤーは、たとえばモバゲーで見られるように、アバターを自分流にアレンジしてパーソナリティを表現しています。もっとさかのぼれば、日本ではRPGの主人公の名前を変えられることがカスタマイズの原点なのかもしれません。現在では、ゲーム内におけるキャラクターのメイキング機能や装備を変えることで見た目も変わる、といった機能はもはや当たり前のものとなっています。

また、ソーシャルゲームは、ある種MODシステムを組み込んだゲームであるとも言えるかもしれません。日本で大きな人気を博しているのと同じように、世界では「Farm Ville」というゲームが驚くべきスピードでユーザー数を増加させています。日本と同じように、こうしたジャンルのゲームでは、あまりゲームをしたことのないライトゲーマーのユーザーが多くなっています。こうしたゲームの、おばあちゃんたちにさえ遊びたいと思わせる魅力は、まさしくこのMOD部分にあると言えるでしょう。

「Farm Ville」のプレイヤーは、自分の農場を作り、自分のイメージに合わせてそれを形にしていきます。そしてその農場を他のプレイヤーと共有することで自分の作品を認めてもらい、満足感が得られるわけです。当然、カスタマイズ機能と構築システムの複雑さでは比になりませんが、基本的な仕組みはMODそのものです。

しかし、欧米でいうところの「カスタマイズ」は、日本のそれよりさらに先を進んでいるのです。日本のプレイヤーは自分のキャラクターや町を飾るためにアイテムを組み合わせているだけに過ぎませんが、欧米のプレイヤーは自身がゲームデザイナーに取って代わってしまっているのです。

「Dragon Age」、「Ultima Online」、「The Sims」を例に挙げてみますと、これらのゲームには、ゲーマーたちが集う巨大なコミュニティがあり、四六時中それぞれのゲーム内の建物やキャラクターのデザイン、デコレーションの仕方についての情報交換をしています。そして、彼らが自身でデザインしたカスタム装備、衣服、インテリアアイテム、スキン、その他ゲーム関係のコンテンツを公開し、多くのユーザーがそれをダウンロードして活用しています。もはや、ここではMODを開発する「モッダー」たちは、単なる消費者ではなく生産者の方へと回り始めているわけです。

MODが広げるゲームの可能性

モッダーは、ゲーム業界にとって理想的なターゲットです。言ってしまえば、モッダーはゲームの価値を(勝手に)最大化してくれる、有能かつ無償の労働者なのです。人気のあるMODはファンを熱中させ、さらにそのファンたちは積極的にアイデアや新たな機能を提案します。ついには、そこから生まれたアイデアによって新たなゲームが誕生することだってあるのです。人気ゲーム「World of Warcraft III 」のMODである「Defense of the Ancients」がその例です。エンジン部分は同じでありながら、まったく異なるキャラクター、ミッション、ユニットのMOD作品で、もはや別のゲームと言っても過言ではありません。それゆえ、「World of Warcraft III」を遊びつくしたプレイヤーももう一度新鮮な気持ちで遊ぶことができ、作品の価値を再度掘り起こしてくれるわけです。さらには、「Defense of the Ancients」自体が面白いと話題になり、それをやるために「World of Warcraft III」を購入する人々が出てくることもあります。

 こうしたMOD開発を前提としてしまえば、ゲーム開発のコスト削減にもつながります。大作でなく小規模な作品であっても、モッダーたちが多種多様なゲームをつくれる土壌を用意すれば、MODが次々と開発され、結果的にはボリュームのあるゲームになります。しかも、そのMODを開発した人々がそれぞれ自発的に宣伝してくれるわけですから、一石二鳥にも三鳥にもなりえるシステムです。さらには、このようなモッダーの中には実際にゲーム開発者となる人もおり、クリエイターの発掘にさえ役立っているのです。

そういうわけで、欧米の開発者はMODの製作に非常に協力的です。MODのためのシステムを積極的に組み込んだり、ツールを提供したりしています。最近は「Little Big Planet」や「SpaceChem」、「StarCraft 2」といった、初心者にもわりと扱いやすいMODツールが搭載されたタイトルが豊富にリリースされています。彼らは、MODとモッダーがゲームの商業的ヒットに必要な重要な要素であると考えているようです。

日本におけるMODの可能性

しかしながら、MODが多くの問題を抱えているのは事実です。現在、多くのMODが搭載されているタイトルはPCゲームが大部分であり、日本のようにコンソール・ゲームが優勢な国ではまずその時点でマイナーな存在になってしまいます。また、自由度が高まれば高まるほどそのデータを制作するにはある程度の知識が必要になってきますので、セミプロのようなごく一部のユーザーだけに受けるのではないかと思われているのも事実です。

また、たとえ制作が可能であったとしても、他にも問題はあります。MODで改造したデータの著作権は一体だれのものなのか。、既存キャラクターの使用は著作権の侵害ではないのか、MOD導入によってプレイデータが破損してしまう可能性がありますがその責任は誰が負うのか、MOD導入後のカスタマーサポートは一体どうするのか……。極めて現実的な諸問題がMODの前には立ちはだかっています。

実際、日本でもMOD的な動きがなかったわけではありません。スーパーマリオを改造した「改造マリオ」が話題になり、関連動画が次々とアップされたり、好きなキャラをみんなで投稿し合える2D格闘ゲーム『mugen』などがネット上で話題になったことがあります。しかし、それは結局メジャーなものにまでは広がらずじまいだったというのが正直なところです。

というわけで、ある程度のカスタマイズとある程度のオリジナリティを楽しめる、「ほどよい」カスタマイズが今現在、日本では限界のようです(同人活動がこれだけ盛んなこの国で、MODが流行らないわけはないとは思いますが…)。

実際、MODにおける諸問題はゲーム開発者とユーザーがそれぞれの責任と勇気を持って行えば、なんとか乗り切れるのではないかとも思います(欧米では実際にそうしているのですし)。とはいえ、ほとんどの日本のゲームファンはまだその段階まできていないようにも感じます。あくまでも日本のゲーマーは、その世界への「ビジター」であるという意識が根付いており、開発者とゲームファンの間の壁はかなり高いもののようです。MOD普及にはまだまだ時間が掛かるでしょう。

最後に、個人的にとても素晴らしいと思うMODが導入されているゲームをリストアップしてみました。ご興味ありましたら、チェックしてみてください!

- Little Big Planet
- Unreal Tournament 3
- Dragon Age
- Sim City 4
- SpaceChem
- Mega Man Powered Up
- Homeworld 2
- Bangai-O HD/Spirits
- Steel Storm: Burning Retribution