2011年10月18日火曜日

英日のゲーム翻訳で最も多く目にする誤訳

海外ゲームの日本語版が発売されると、プレイヤーにより誤訳(Mistranslations)が発見され、インターネットのフォーラムなどを通じてその誤訳の噂が広まる、といった光景は、昨今では珍しくありません。しかし、私がこれまで多くのゲームで発見してきたにもかかわらず、不思議とインターネット上で指摘がなされていない誤訳があるのです。今回は、その誤訳に関して話をさせていただきたいと思います。

まず、あなたが英語のゲームを日本語に翻訳するとして、ゲーム中に以下の枠内のような画面があるとしましょう。
STATS Enemies Killed: 882 Items Unlocked: 65/100 Missions Completed: 37/50Points Collected: 85,578,300 Time Played: 20:30:09
上記は、海外ゲームでよくお目にかかる、”Stats”画面を模したものです。この画面のタイトルである”Stats”という英語、あなたなら何と訳しますか?

“Stats”は一見、”Status”の略語であるように見えるかもしれませんが、実はこれ、”Status”ではなく”Statistics”の略語です。”Statistics”を英和辞典で引いてみると、「統計」、「統計表」などの日本語訳が出てくると思います。”Stats”画面では、ゲーム中で獲得したポイント数や合計プレイ時間といった、ゲームプレイに関する「統計的なデータ(Statistics)」を参照することができるのです。

しかし、日本語に翻訳された海外ゲームをプレイしていると、この”Stats”が「ステータス」と訳されているケースを非常に多く見かけます。日本のゲームで「ステータス」画面というと、キャラクターの体力、攻撃力、所持アイテムといった情報を表示する画面を指すのが一般的であり、上の例のような画面のことを「ステータス画面」とは、なかなか呼ばないはずです。このことは、Googleなどで「ステータス画面」と入れて画像検索をかければ一目瞭然でしょう。そのため、”Stats”画面の”Stats”が「ステータス」と訳されていると、日本人ゲーマーとしては、いささか違和感を覚えてしまいます。

ちなみに私自身が”Stats”を訳すときは、「プレイ記録」や「プレイデータ」、または「レコード」や「戦歴」といった日本語をあてることが多いです。その辺りの細かい言い回しは、”Stats”画面で表示されている項目、およびゲームの世界観などを考慮して決めるようにしています。

ただ、この”Stats”の問題は少々くせ者で、”Stats”を「ステータス」と訳しても問題ない場合というのもあるのです。例えば、下の”Stats”画面で表示されているのは、キャラクターのレベル (Level)や体力(Health)といった情報であり、日本のゲームでいうところの「ステータス画面」で表示される情報とまったく合致するのです。こういったケースでは、”Stats”を「ステータス」と訳しても何ら問題はありません。おそらく、”Stats”を”Status”の略語だと勘違いしてしまうゲーム翻訳家が多いのは、下のような”Stats”画面も存在することが原因なのではないでしょうか。



Aeria Games社 ”Twelve Sky 2”より (http://12sky2.mmosite.com/eu/)

“Stats”を「ステータス」と訳してしまうミスは、ゲーム翻訳において、私が最も多く見かけてきた誤訳の一つです。日本でも有名な海外ゲーム、例えば10万本以上出荷されるような人気タイトルですら、このミスを見かけることがあります。

…ただ、正直に告白すると、私自身、駆け出しの頃にこの誤訳を犯してしまったことがあるのです。そのときは途中で気づき修正したので、何とか事なきを得ましたが…。そん??なこともあったため、他のゲーム翻訳家の方々にも注意喚起しておこう、などと思い、こうして筆を執らせていただいた次第であります。??