2011年10月31日月曜日

欧米で流行する、MOD(ユーザー生成コンテンツ)文化とは

現在、欧米でMOD文化と呼ばれるユーザー生成コンテンツが流行しているのをご存じでしょうか。これは、ゲーム開発者ではなく、ゲームファンがそのゲームデータのエンジンを使ってゲームを自由に創りかえるもので、語弊はあるかもしれませんが、平たく言うと改造データです。MODを導入すれば、ステージデザイン、テクスチャ、アイテム、さらにキャラクターにいたるまで自分の好きに創りかえることができ、さらにはそれをユーザー皆で共有し、利用することができます。例えるなら、モンスターハンターであなたが好きなフィールドを創り上げ、そこに好きなモンスターを自由に創造して棲息させ、まったく新しいクエストを世界中に配信することができるというわけです。

MOD自体は決して新しいものではなく、10年以上前からゲーマーを魅了してきたゲームプレイの一つのトレンドでしたが、最近ではネットを介してステージエディターやその他MOD専用のソフトを配布できるようになったこと、さらには開発者の側も積極的にMODに参加するようになったこともあり、自分だけのゲームコンテンツをデザインし始める「素人」ゲーマーがますます増えているのです。


MODはプレイヤーをゲームデザイナーにする

 日本でも、「カスタマイズ」のブームはかなり前から起こっています。日本のプレイヤーは、たとえばモバゲーで見られるように、アバターを自分流にアレンジしてパーソナリティを表現しています。もっとさかのぼれば、日本ではRPGの主人公の名前を変えられることがカスタマイズの原点なのかもしれません。現在では、ゲーム内におけるキャラクターのメイキング機能や装備を変えることで見た目も変わる、といった機能はもはや当たり前のものとなっています。

また、ソーシャルゲームは、ある種MODシステムを組み込んだゲームであるとも言えるかもしれません。日本で大きな人気を博しているのと同じように、世界では「Farm Ville」というゲームが驚くべきスピードでユーザー数を増加させています。日本と同じように、こうしたジャンルのゲームでは、あまりゲームをしたことのないライトゲーマーのユーザーが多くなっています。こうしたゲームの、おばあちゃんたちにさえ遊びたいと思わせる魅力は、まさしくこのMOD部分にあると言えるでしょう。

「Farm Ville」のプレイヤーは、自分の農場を作り、自分のイメージに合わせてそれを形にしていきます。そしてその農場を他のプレイヤーと共有することで自分の作品を認めてもらい、満足感が得られるわけです。当然、カスタマイズ機能と構築システムの複雑さでは比になりませんが、基本的な仕組みはMODそのものです。

しかし、欧米でいうところの「カスタマイズ」は、日本のそれよりさらに先を進んでいるのです。日本のプレイヤーは自分のキャラクターや町を飾るためにアイテムを組み合わせているだけに過ぎませんが、欧米のプレイヤーは自身がゲームデザイナーに取って代わってしまっているのです。

「Dragon Age」、「Ultima Online」、「The Sims」を例に挙げてみますと、これらのゲームには、ゲーマーたちが集う巨大なコミュニティがあり、四六時中それぞれのゲーム内の建物やキャラクターのデザイン、デコレーションの仕方についての情報交換をしています。そして、彼らが自身でデザインしたカスタム装備、衣服、インテリアアイテム、スキン、その他ゲーム関係のコンテンツを公開し、多くのユーザーがそれをダウンロードして活用しています。もはや、ここではMODを開発する「モッダー」たちは、単なる消費者ではなく生産者の方へと回り始めているわけです。

MODが広げるゲームの可能性

モッダーは、ゲーム業界にとって理想的なターゲットです。言ってしまえば、モッダーはゲームの価値を(勝手に)最大化してくれる、有能かつ無償の労働者なのです。人気のあるMODはファンを熱中させ、さらにそのファンたちは積極的にアイデアや新たな機能を提案します。ついには、そこから生まれたアイデアによって新たなゲームが誕生することだってあるのです。人気ゲーム「World of Warcraft III 」のMODである「Defense of the Ancients」がその例です。エンジン部分は同じでありながら、まったく異なるキャラクター、ミッション、ユニットのMOD作品で、もはや別のゲームと言っても過言ではありません。それゆえ、「World of Warcraft III」を遊びつくしたプレイヤーももう一度新鮮な気持ちで遊ぶことができ、作品の価値を再度掘り起こしてくれるわけです。さらには、「Defense of the Ancients」自体が面白いと話題になり、それをやるために「World of Warcraft III」を購入する人々が出てくることもあります。

 こうしたMOD開発を前提としてしまえば、ゲーム開発のコスト削減にもつながります。大作でなく小規模な作品であっても、モッダーたちが多種多様なゲームをつくれる土壌を用意すれば、MODが次々と開発され、結果的にはボリュームのあるゲームになります。しかも、そのMODを開発した人々がそれぞれ自発的に宣伝してくれるわけですから、一石二鳥にも三鳥にもなりえるシステムです。さらには、このようなモッダーの中には実際にゲーム開発者となる人もおり、クリエイターの発掘にさえ役立っているのです。

そういうわけで、欧米の開発者はMODの製作に非常に協力的です。MODのためのシステムを積極的に組み込んだり、ツールを提供したりしています。最近は「Little Big Planet」や「SpaceChem」、「StarCraft 2」といった、初心者にもわりと扱いやすいMODツールが搭載されたタイトルが豊富にリリースされています。彼らは、MODとモッダーがゲームの商業的ヒットに必要な重要な要素であると考えているようです。

日本におけるMODの可能性

しかしながら、MODが多くの問題を抱えているのは事実です。現在、多くのMODが搭載されているタイトルはPCゲームが大部分であり、日本のようにコンソール・ゲームが優勢な国ではまずその時点でマイナーな存在になってしまいます。また、自由度が高まれば高まるほどそのデータを制作するにはある程度の知識が必要になってきますので、セミプロのようなごく一部のユーザーだけに受けるのではないかと思われているのも事実です。

また、たとえ制作が可能であったとしても、他にも問題はあります。MODで改造したデータの著作権は一体だれのものなのか。、既存キャラクターの使用は著作権の侵害ではないのか、MOD導入によってプレイデータが破損してしまう可能性がありますがその責任は誰が負うのか、MOD導入後のカスタマーサポートは一体どうするのか……。極めて現実的な諸問題がMODの前には立ちはだかっています。

実際、日本でもMOD的な動きがなかったわけではありません。スーパーマリオを改造した「改造マリオ」が話題になり、関連動画が次々とアップされたり、好きなキャラをみんなで投稿し合える2D格闘ゲーム『mugen』などがネット上で話題になったことがあります。しかし、それは結局メジャーなものにまでは広がらずじまいだったというのが正直なところです。

というわけで、ある程度のカスタマイズとある程度のオリジナリティを楽しめる、「ほどよい」カスタマイズが今現在、日本では限界のようです(同人活動がこれだけ盛んなこの国で、MODが流行らないわけはないとは思いますが…)。

実際、MODにおける諸問題はゲーム開発者とユーザーがそれぞれの責任と勇気を持って行えば、なんとか乗り切れるのではないかとも思います(欧米では実際にそうしているのですし)。とはいえ、ほとんどの日本のゲームファンはまだその段階まできていないようにも感じます。あくまでも日本のゲーマーは、その世界への「ビジター」であるという意識が根付いており、開発者とゲームファンの間の壁はかなり高いもののようです。MOD普及にはまだまだ時間が掛かるでしょう。

最後に、個人的にとても素晴らしいと思うMODが導入されているゲームをリストアップしてみました。ご興味ありましたら、チェックしてみてください!

- Little Big Planet
- Unreal Tournament 3
- Dragon Age
- Sim City 4
- SpaceChem
- Mega Man Powered Up
- Homeworld 2
- Bangai-O HD/Spirits
- Steel Storm: Burning Retribution

2011年10月27日木曜日

日本ゲームを海外の視点で斬る! 8月発売タイトル編

「愛情があるからこそ、全力を尽くしていないものは厳しい批判の対象となる。」

こ のコラムは、毎月、海外での信頼度が高く、プレイヤーや業界の方の注目が集まるゲームズメディア関連サイト、雑誌、ポッドキャストなどを参考し、日本生ま れのタイトルに対する賛否両論を分析するコラムである。これまでの似たようなコラムの大半は、「それぞれの市場の嗜好はこれだ!」と言わんばかりの傾向で あったが、ゲームというエンターテインメント及びアートを愛するプレイヤーの好みはそんなにシンプルではないと確信する。以下のフィードバックを熟読した 上、ご意見や考えを是非、お訊かせください。

・戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校

プ レイステイーション3で発売されたシリーズの一作目は、日本国内外において、口コミや時間の経過とともに、最終的に売り上げや評判の視点からでもヒットス テータスに達した。だが、続編を期待した欧米ゲーマーにはハードとして低迷しているPSPに二作目が出るニュースはちょっと複雑な感情を生んだ。

それにもかかわらず、ゲーム性に対して多くの声がポジティブであるのだが、今月の他タイトルとの共通点の1つが存在すると指摘されている。1up.comのKat Bailey氏が語る:

“果てしないカットシーンとくだらない高校生のドラマのような薄味の対話のあるMetroid: Other MやYs 7と同様な「戦場のヴァルキュリア2」が登場します。だが、その他のゲームと違って、その上記の要素が良いゲームを汚すかどうかはプレイヤーの嗜好次第で ある。”

映像などに対してPS3と太刀打ちできないPSPだが、ストラテジー要素においては「デザイナー達がそれと賢く取り込んで、PSPの弱みを素晴らいく強みに変えられた」とBailey氏が褒めた。

だが、ストラテジーゲームの要素について多くの賞賛があるにもかかわらず、ストーリーの表現する方法が擦り切れてしまっているようだ。GameProのAJ Glasser氏が説明する:

残 念なのはその重みのないストーリーだ。面白いところが全くないとは言えないが、[…]耳障りな女子高生と陳腐なアニメストーリー要素のせいで、シリーズの 一作との繋がり感が殆どなく、最後までプレイするやる気がなくなる。さらに、「戦場のヴァルキュリア3」が出たら、今後のストーリーに対する興味が湧きお こるとは言いがたい。

ただ俯瞰してみれば「ゲーム」としては、「戦場のヴァルキュリア2」がよく楽しめる作品の1つであるのは明らかだ。

執筆者のMartin Adolfo氏の意見では「SRPGゲームとしての中では、プレイヤーは戦いの結果に無限な影響をあたえる事ができる数少ないゲームのひとつです。さらに、キャラクターの個性やミッションは、素晴らしくできています。間違いなく、今年のトップテンに入るタイトルの1つです」。

要 約すると、ストーリー部分を飛ばしてプレイすれば他にない素晴らしいSRPG経験が待っている。だが特筆すべきは、「ストーリーはいらない」との批判では なく、ストーリーの性質や内容を変えて欲しいという声が多い事である。実際には、殆ど全てライターが一作目のストーリーの新鮮さや面白さを示した。もう ちょっと「大人的」なストーリー内容やキャラクターそれぞれの表現する方法を期待している方が多いようである。洗練された一作目はそのストーリーとゲーム 性がのバランスが取れた一例があるからこそ、オリジナルの魅力が活かせるSEGAを信じているファンがまだ多いと考えられる。

・Castlevania: Harmony of Despair (Xbox Live)

い うまでもなく、「悪魔城ドラキュラ」、いわゆる「Castlevania」というシリーズは海外において、非常に人気であり、特にシリーズの2Dタイトル は大人気である。現HD時代へ入ってから2Dの「悪魔城ドラキュラ」をHD化してくれないかとのプレイヤーの声がずっと響いているが、 「Castlevania: Harmony of Despair」の新マルチプレイ要素や大胆なゲーム性が発表されて以来、ファンの中で興奮感と不安感が共存する状態となった。現在、 「Castlevania: Harmony of Despair」は既に配信中だが、評価は一致せず、分析の結論はまだ未定である。

DestructoidのJim Sterling氏がこの荒れた議論に関して説明してみた。

“「Castlevania: Harmony of Despair」は別によくないわけではありません。でもXBLAタイトルの中ではもっとも分かりづらく、相反的なゲームの1つである。現時点では、この 批評を書いている段階でもこのゲームの良し悪しに関して脳内で理解することに取り組んでいる最中だ。それが楽しかったのか、大変な作業だったのか…”

“デ ザインの視点から考え、1つの大きな問題点を言うとしたら、プレイヤーの行動に対するフィードバックは非常に悪い。キャラクターの操作に関しては、それぞ れのキャラが登場したゲームをプレイしていなかったユーザーが、その個々のキャラの特徴や操作方法が分からず、説明不足の影響でかなり戸惑うのではないか と思われる。アビリティーやゲームストラテジーは、プレイしながら徐々に身に付けるしかない。メニュー等にも不明な点が多い。”

Sterling氏だけではなく、HD化されたことは大歓迎だったが、前作のアートアセットを再利用することが多く、ちょっとがっかりしたプレイヤーも多い結果でもある。

だがユーザーはがっかりしただけというわけではない。ゲームプレイを通じた満足感が上手く説明できなかったケースは割りと多かったが、KotakuのMichael McWhertor氏がこのゲームのもっとも注目すべき点に関して簡潔に示した。

“シリーズの生みの親である五十嵐氏の他作品(悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲、悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印等)を通じて提供された素晴らしい1人プレイが本作では除かれたのは確かだが、面白い実験の1つとして「Harmony of Despair」を認める価値があるのではないか。

・ Ivy the Kiwi?

歴史の長い人気シリーズの継続作の多い8月の中、全ての面で良い評判を得たタイトルが1つだけあった:プロペ開発の「Ivy the Kiwi?」である。

JoystiqのJC Flether氏が「Ivy the Kiwi?」に関して述べた:“最近のゲームで滅多に見当たらないこと – 洗練された単純なシステムの1つがゲーム全体の楽しさや面白さを支え、いくらプレイしても飽きないこと。”

“バーチャル絵本のように彩色が絶妙で、音楽がディズニー映画から勝手に利用された印象にあっては、生々しい縮小された世界に囲まれた感じである。久々にクリエイター中裕司氏の革新的なセンスを味わえて、ファンとしては非常に嬉しいことです。”1upのCole Jones氏

Nintendo LifeのCorbie Dillard氏により、“「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」が愛着あるクラシックとなったのと同じような革新性があり、クリエイター(中裕司氏)が自身の強みを把握して再び素晴らしい作品が世に出された。開発者がこんなにシンプルであり、簡単に理解できるゲームプレイの仕組みを考え付いたこと、そして実現されたことだけで驚くほど素晴らしい。

有 名なシリーズ作ではなく、8月発売の他タイトルより認知度が低いとの影響もあり、プレイヤーがあまり期待されていなかったゲームだから「裏切られた」とい う感じがなかったかもしれません。いわゆる、ゲーマーが殆ど知らないタイトルということは、逆に利点です。でも言うべきなのは、「Ivy the Kiwi?」の賞賛された点は:1)オリジナリティー 2)ゲーム性がよい形で実行された 3)3D化への傾向がある業界の中、斬新な2Dグラスタイルが 受け入れられた。

・Ys 7 (PSP)

海 外において全盛のハード上で殆ど発売されていないシリーズという理由があり、他RPGシリーズと比べれば認知度は比較的低いことも確かだが、その反面 「Ysシリーズ」ファンの熱意に匹敵するタイトルは少ない。シリーズの最新作「Ys 7」に対するやりとりはたいていポジティブだし、アクションRPGが好きなゲーマーには待ちに待ったタイトルだが、残念ながらこのゲームをレビューする チャンスを見逃したサイトは少なくはない。が、面白い分析が全くないわけではない。その分析を掘り下げていこう。

“「Ys 7」のストーリーは、率直に言うと、面白いところが1つもない。ファルコムがストーリーの要素にを力づくで入れ込んだ事が残念ですが、特にゲームの早期に わりと大きな役割とされたことは、ゲーム全体のプレイ経験を損なう可能性もある。だが、その単調なテキストや普通のキャラクター肖像のから外れた部分を覗 いてみると、アクションRPGとしては近年そのジャンル全ての中でも快作である。ストーリー自体が幾ら平凡でも、間違いなく「Ys 7」はアクションRPGファンが見逃せない、プレイすべきタイトルである。王道のゲームスタイルに根付いたことは関係なく、戦闘のスピードや爽快感が絶妙 である良い影響のおかげで、そのストーリー要素を大目にみられる可能性が高い。”

非常に洗練されたゲーム性とその爽快感を提供したのであれば、ゲーム全体の品質(ストーリー性等)を同じレベルで維持しなければ、全てが台無しになる可能性は低くない。これは前述の「戦場のヴァルキュリア2」に対する意見との共通点として注目すべきポイントではないか。

公 にこのシリーズの大ファンとして知られるGamasutra編集者のChristian Nutt氏は、Parish氏と違ってゲームの他の部分を重視した。戦闘やゲーム性全体としては非常に良いと発言されつつも、「Ys」というゲームのもっ とも大事な要素がなくなったのではないかと語られた。その要素というのは、「孤独感」である。ゲームシステムとしてはパーティー(キャラクター3人を切り 替えながら、それぞれのキャラクターの特技を使いこなす)という仕組みが楽しく、よく出来たところですが、そのシステムの影響で、1人でダンジョンの深い 奥まで厳しい困難を乗り越える要素は「Ys」というゲームシリーズの醍醐味ではないと位置づけられてしまった。実は、「Metroid: Other M」に対しても似たような意見が多数あった。

・Metroid Other M

特 に海外市場の中ではいうまでもなく、期待作の極致だ。一方で、待ちにまったタイトルだからこそ、評価が通常より厳しくなるとも考えられる。ゲームが通常、 評価される要素においては(映像、ゲーム性、音質など)「良い」という声が多かったのは確かだったが、ほぼ全てのライターが重視した、「ゲームが良いかど うか」の評価基準は、メトロイドの主人公であるサムスの性格や本質を表現する方法ということであった。

G4TV.com、ゲームに関する最大メディア(テレビ、ウェブなど)の1つであるAbbie Hepp氏が、「Metroid Other M」というゲームだけではなく、そのゲーム制作や開発の責任者へ非常に厳しい批判を示した。当然ゲームファンのコミュニティー間で話題になり、かなり大きな影響を与えた。

“Other  Mまでは、サムスは完全に無言の主人公で、「人格」というものはプレイヤーの想像上にしか存在しなかった。[…]サムスはこの15年間、一人でいろんな ミッションに挑戦したり、スペース・パイレーツを退治したり、宇宙を救ったり、自分の力でサバイバルに挑むようなキャラクターだったということを忘れろと 言われているように思える。Other Mでは、サムスは「受身で子供っぽくて自信もなく、男性にちゃんと命令されないと自分では何も出来ない弱々しい女 の子」という印象が与えられる。”

“「完 全受身でとりあえず言われたことに従う」という時もあるが、そうでない時はフラッシュバック・シーンによって与えられる印象はかなり生意気でガキっぽい感 じになり、いわゆる性差別の臭いがプンプン出ている。それ以外のゲームプレー(キャラクター・デザイン、サウンド、そしてレベル・デザインも含め)に関し ては、あえて中途半端としか言えない。Other Mは、誰がやっても「期待して損した」というような気持ちを抱くでしょう。ストーリー的には、当たり外 れは五分五分で、その中に「あ、これはよくやったな」と思わせるような場面は少ししかない上、任天堂が今までこのシリーズに込めいてた力はどこへいってし まったのでしょう。”

“ゲームのポイントはというと、ゲーム史上最高の偶像的(しかも性的特徴のない)女性キャラクターを具体化することだったのに、結果としてはサムス本人にもそのファンの皆さんにも失礼に当たる気がする。”

上 記の通り、ライターだけではなく、ユーザーでもゲームの評価というものに対して考えているケースはすくなくはなく、むしろ増えている。重要なポイントとい うのは、ゲームをプレイすることを通してプレイヤーの愛情が沸き、その上にゲームとそのキャラクターやストーリーによって、他の「アート」なメディアと同 じように感情移入できる。そう考えると、このような意見が増えてもおかしくはない。実に自然な流れと考えられる。クリエイターの方がこのポイントを念頭に 置くのは、ゲームというメディアの未来を守る為、大事な忠告だと考えられる。

方言を訳さなあかんねんけど、どないしたらええの?

まずは、最初にちょっと言わしてもらいたい事があるんやけど、この記事のトーンちゅーか、ちょっとガサツな書き方を許してもらいたいですわ。一応、方言に関する話なんやから、自分のいっちゃん慣れとる方言で書いたろかなあ思いましてな、とりあえず今回だけなんでちょっと堪忍してな。(それと、もっぺん言わしてもらうけど、日本語は母国語ではないんで、ちょっとおかしなとこはあったりすると思うねん。なんかすんません。)

ほんなら本題へと続けましょか。今回の本題は?っちゅーと、「方言と翻訳の困難な関係」ですわ。僕自身は英語、日本語、ほんでちょっとだけスペイン語しか出来ひんので他言語に関してはよー分かれへんけど、多分どの言語でも中には異なる方言はあると思いますやんか。中には「ちょっとしか変われへん」(例:大阪弁・京都弁)っちゅーやつがあれば、「何やねん、これ?!言語が全然ちゃうやん?!」(例:沖縄弁・日本語)っちゅーやつもあるわな。基本的には同じ言語やのに、なんでそんな変わるかって、そりゃあ国・地域・文化・歴史などなど、いろんな要因があると思うねんけど、普通は様々な方言の中から一つだけ共通語的なもんを選んでそれを「標準語」として使われるゆー仕組みになってんねん。ニュース、新聞、契約書、国語の授業、ビジネスなどに普段使われるんは、その標準語っちゅー方言なんですわ。

せやから、例えば和英翻訳を依頼されるとすんねやんか?例えば契約書とかなんかのユーザーマニュアルとかやったら、そりゃあもちろん原稿も標準語で書かれとるわけやし、ほんで納品するもんも当然きれいな「標準語」英語にせなあきませんやん。せやけど、例えば漫画・小説とか、ドラマや映画などの台本とかで、中のセリフは全部方言やったら、どないしたらええんやろて、思うやん?

今まではあんまなかってんけど、たまに来よんねん、そうゆー案件て。昔はちょっとおもろい感じなインディーズ映画の台本の和英翻訳の依頼を頂いたんやけど、 簡単に言うたらまだまだ「翻訳者の卵」に過ぎひん頃やったんで、めっちゃ困りましたわ。なぜか言うたら、セリフの半分ぐらいはコッテコテな大阪弁やったからやねん。元々は関西弁しか喋られへんかった僕からしたら、内容が余計分かりやすいんで全然ええねんけど、「キャラクターの雰囲気も喋り方のスタイルもできるだけ保つように英語にせー」言われてもな…思うて、ほんま困りましたがな。その中のキャラクターの喋り方や方言の使い方などがジョークやギャグのオチなどに完全に繋がってもうとる感じやったし、せやけど英語かていろんな方言がある言うても「アメリカ英語・イギリス英語」と「東京弁(もしくは標準語)・ 大阪弁」、それぞれの関係は全然ちゃうもんなんで、完璧に訳しようがないねん。最初はごっつ難しかってんけど、最終的には「標準語キャラクターはきれいな英語で、大阪弁キャラクターはうちの地元のスラングをちょっと濃くした感じ」ゆー風に決めて、結局めっちゃ楽しい仕事になりましたわ。(ちなみにクライアントがその「方言訳」見たら意外とめっちゃウケてもうたみたいで、怒られるんちゃうかなあ思うたら逆にえらい褒められよった。)

もう一つの例を出さしてもらうと、高橋留美子の「らんま1/2」っちゅー漫画てありますやん。高校時代によー観ててんけど、英語吹き替え版しかなかってん。ちょっとオタクっぽい話になってまうかも知れんけど、響良牙(ヒビキ・リョウガ)ゆーキャラクターが東京都練馬区を捜しに出て、迷子になってもうて結局四国に辿り着いてまうっちゅーシーンがあんねん。なんかおかしいぞて気付いて、そこらのおっちゃんに「練馬区はどこですか」と声をかけると、(日本語のセリフはハッキリ覚えてへんけど)「え?ここは四国だよ?」みたいな答えが返ってくるシーンやねんけど、その村のおっちゃんは英語吹き替え番では思いっきりアメリカの南部(つまり「ど田舎」)なまりで喋りよんねん。後から日本語が出来るようになってもっぺん観てみると「あ、うまいわ、これ!」と思うた覚えありますわ。さっき言うとったインディーズ映画の台本をどないして訳したらええんやろて困っとる時に、このエピソードをたまたま思い出してしもうてめっちゃ助かりましたわ。

場合によっては方言なんか気にせんと普通に訳したらええやんちゅー時はもちろんあんねんけど、やっぱしこうゆーシチュエーション(要するに、「方言やないと意味 伝われへん」ゆー時)は頑張ってうまい事「言語と言語」の上に、「方言と方言」のことをよー考えて訳すべきやと思うねん。当然、契約書や特許やったらあかんねんけど、漫画や小説などはたまにはええんかなあて、僕は思いますわ。ええんかなあっちゅーか、こうゆーのんて楽しいし、勉強にもなるし。

もちろん、ちゃんとしたウェブサイトに載せるような記事とかやったらあかんけどな。

あっ、やってもうたがな…。

2011年10月24日月曜日

英->日のゲーム翻訳で最も多く目にする誤訳

海外ゲームの日本語版が発売されると、プレイヤーにより誤訳(Mistranslations)が発見され、インターネットのフォーラムなどを通じ てその誤訳の噂が広まる、といった光景は、昨今では珍しくありません。しかし、私がこれまで多くのゲームで発見してきたにもかかわらず、不思議とインター ネット上で指摘がなされていない誤訳があるのです。今回は、その誤訳に関して話をさせていただきたいと思います。

まず、あなたが英語のゲームを日本語に翻訳するとして、ゲーム中に以下の枠内のような画面があるとしましょう。

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STATS
Enemies Killed: 882
Items Unlocked: 65/100
Missions Completed: 37/50
Points Collected: 85,578,300
Time Played: 20:30:09
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上記は、海外ゲームでよくお目にかかる、”Stats”画面を模したものです。この画面のタイトルである”Stats”という英語、あなたなら何と訳しますか?

“Stats”は一見、”Status”の略語(abbreviation)であるように見えるかもしれませんが、実はこれ、”Status”では なく”Statistics”の略語です。”Statistics”を英和辞典で引いてみると、「統計」、「統計表」などの日本語訳が出てくると思いま す。”Stats”画面では、ゲーム中で獲得したポイント数や合計プレイ時間といった、ゲームプレイに関する「統計的なデータ(Statistics)」 を参照することができるのです。

しかし、日本語に翻訳された海外ゲームをプレイしていると、この”Stats”が「ステータス」と訳されているケースを非常に多く見かけます。日本 のゲームで「ステータス」画面というと、キャラクターの体力、攻撃力、所持アイテムといった情報を表示する画面を指すのが一般的であり、上の例のような画 面のことを「ステータス画面」とは、なかなか呼ばないはずです。このことは、Googleなどで「ステータス画面」と入れて画像検索をかければ一目瞭然で しょう。そのため、”Stats”画面の”Stats”が「ステータス」と訳されていると、日本人ゲーマーとしては、いささか違和感を覚えてしまいます。
ちなみに私自身が”Stats”を訳すときは、「プレイ記録」や「プレイデータ」、または「レコード」や「戦歴」といった日本語をあてることが多い です。その辺りの細かい言い回しは、”Stats”画面で表示されている項目、およびゲームの世界観などを考慮して決めるようにしています。

ただ、この”Stats”の問題は少々くせ者で、”Stats”を「ステータス」と訳しても問題ない場合というのもあるのです。例えば、下 の”Stats”画面で表示されているのは、キャラクターのレベル(Level)や体力(Health)といった情報であり、日本のゲームでいうところの 「ステータス画面」で表示される情報とまったく合致するのです。こういったケースでは、”Stats”を「ステータス」と訳しても何ら問題はありません。 おそらく、”Stats”を”Status”の略語だと勘違いしてしまうゲーム翻訳家が多いのは、下のような”Stats”画面も存在することが原因なの ではないでしょうか。


“Stats”を「ステータス」と訳してしまうミスは、ゲーム翻訳において、私が最も多く見かけてきた誤訳の一つです。日本でも有名な海外ゲーム、例えば10万本以上出荷されるような人気タイトルですら、このミスを見かけることがあります。

…ただ、正直に告白すると、私自身、駆け出しの頃にこの誤訳を犯してしまったことがあるのです。そのときは途中で気づき修正したので、何とか事なきを得ましたが…。そん
なこともあったため、他のゲーム翻訳家の方々にも注意喚起しておこう、などと思い、こうして筆を執らせていただいた次第であります。

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筆者プロフィール
羽無エラー(はねなしえらー)

ゲームソフトの翻訳、娯楽スポーツ番組の字幕翻訳、
ゲームニュース記事の翻訳、コラムの執筆など、
多方面で活動中のエンタメ翻訳家。
和訳/英訳合わせ、約20本のゲームソフトの翻訳に携わる。
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翻訳業者 対 個人翻訳者


当サイトをオープンしてから、翻訳の依頼を翻訳会社に発注した方が良いのか、それとも個人の翻訳者にお願いすべきか、聞かれる事が多いです。そこで、翻訳者を取りまとめている翻訳会社のプロジェクトマネージャーである私が、自分の意見をここで述べたいと思います。
翻訳会社の本来あるべき仕事とは、お客様から発注されるテキストを翻訳するだけではなく、その案件を全体的に管理し、品質の高い納品物を納期内にお客様に提供することです。もちろん、翻訳会社は、その案件に相応しい翻訳者を選択する事を期待されるし、さらに、納品の前に第三者により品質チェック、レイアウトの調整など、行わなければいけません。

但し、近年、『本来あるべき姿』は、現実とは違ったものです。インターネットの普及により、法人化した小さいエージェントが増えて、結果的に、業界の標準単価は半分ぐらいに下がりました。それに対抗するために、ほとんどの翻訳会社は競って単価を下げてしまい、そのおかげで、本来やるべき品質チェックや案件管理は出来なくなっています。

その為、個人のお客様にとっては、手数料をとる以外に何もしない翻訳エージェントよりは、良さそうな翻訳者を選んで、直接仕事を依頼する方が良くなりました。Active Gaming Mediaはもちろんですが、ほかにも、素晴らしい個人の翻訳者が登録されているサイトは、沢山あります。

しかし、貴方が複数言語を一度に翻訳しないといけない法人様であれば、何人もの翻訳者とメールのやり取りなど行うのは、面倒な事でしょう。そのような場合は、翻訳会社に案件を任せたほうが良いかもしれません。但し、必ず、細心の注意を払って翻訳会社を選びましょう。確認していただきたい点としては:

1.会社の中でネイティブの翻訳者がいるのかどうか。

2.過去にこれらの言語の翻訳経験があるのかどうか。ほとんどの翻訳者のホームページを見ると、『50言語対応可能』などと書いてあったりしますが、大体は事実と異なります。発注を受けてから必死に翻訳者を探すエージェントが多く、私も、翻訳者だった時、まともなトライアルなんてさせられた事がありません。

3.他社との価格を比較しましょう。

4.タイプミスや翻訳漏れがある場合は、10%値引きしてもらうなど、なんらかの条件を付けましょう。

但し、一番重要な判断ポイントは、こちらです:翻訳コーディネーターの対応。日本の営業担当者の対応は海外に比べると優れていますが、基本的に良いコーディネーターとは、原稿を受け取るだけではなく、幅広い付属資料、用語集なども請求してくるはずです。品質に対する熱意を感じさせるような人であれば、それは間違いなく良いプロジェクトマネージャーでしょう。

従って、個人の翻訳者にも翻訳会社にも長所と短所はありますが、翻訳案件を依頼される際に一番大事なのは、その案件の内容にきちんとあった翻訳者や翻訳会社を選ぶことです。

2011年10月21日金曜日

翻訳のコンビニ(著:株式会社アクティブゲーミングメディア)

2000年から日本国内での翻訳会社はキノコのように増え、2009年現在は4000社を超えると言われております。今回は日本の中小翻訳会社の正体に迫りたいと思います。

私は英語が少々話せます → フリーランス翻訳者として3年間働いてかなり忙しかった → 翻訳会社から受注する翻訳案件の単価が低すぎるので、個人営業のためのホームページを作りました → 信頼度を上げるために親戚と一緒に有限会社を設立しました

上記のような流れで翻訳業界に入った翻訳会社は少なくないでしょう。実は、日本には限らず、欧州や欧米でも、このように会社を作った例が数多く見られます。悲観的な事は言いたくないのですが、翻訳市場自体はそれ程大きくなっていないのに、ここ10年でその市場の中で生活しようとしている人の数は、500%以上に増えました。

原因は、様々です:

1.インターネットの普及。インターネットのお陰で自宅から簡単に作業が出来るようになり、『パートタイムで翻訳でもしようかな』と考える人が増えた。

2.ソフトウェアの発達。パソコン、携帯、ナビゲーション・システム・・・今は、15年前と比べると考えられない程数多くのソフトウェアが毎日のように発売されており、それらが多言語にローカライズされている。

3.世界不況。ここ一年間、全世界で失業した人が多い。その中で、2言語以上話せる多くの人が、繋ぎの仕事を探すため。

しかしながら、これらの人々は『翻訳者になりたいので、文献学を勉強しよう』、『翻訳支援ソフトのコースを受けよう』などと思った人ではない。やむを得ない状態に陥り、自分の言語能力を活かして簡単にお金を稼ごうと考える方が多い。

もちろん、この中で最終的にフリーランス翻訳者として素晴らしいキャリアを築き上げる翻訳者もいるし、エージェントになって、大きく翻訳業界に貢献する人もいます。しかし、全体的に考えると、これらの現象で翻訳マーケットの全体的なレベルは、ここ数年で圧倒的に下がったと思います。推測ですが理由は下記の通りです:

1.中小企業の多くは、品質を犠牲にして安すぎる単価で仕事を請ける。一人の翻訳者が一日2000文字まで翻訳出来るとしたら、単価3円の翻訳で、一日あたり稼げるのは6000円ほどです。従って、3円で翻訳を請ける翻訳者は、必死に5000文字ぐらい訳そうとします。結果的に、品質には問題が出てしまいます。

2.チェックなしの納品。プルーフリーダーに支払う予算がないので、翻訳者から納品された翻訳をそのまま納品するエージェントが多い。

3.翻訳専門家がいなくなっている。一昔前は、翻訳の中でも自分は絶対手を出してはいけない分野が多かったが、最近は『仕事なら何でも請けたい』と言う翻訳者が多い。

4.お客様第一。もちろん、これは素晴らしい事ではありますが、お客様を満足させるために無理な納期で仕事を請けてしまうエージェントが多い。

私が大学生の時に、壁に古代ラテン語でこの文章が書いてありました:『翻訳とは、言葉の職人です』
しかし、社会人になって翻訳会社に勤めると、職人の仕事よりもコンビニエンスストア的なサービスをやっているような感じがして仕方がありません。

最近、日本の大手メーカーの商品の英語マニュアルを読んでも、品質は本当に低いので、その翻訳作業は『どこかの誰かが一文字4円で翻訳したんだろうな』と思う時があります。

しかし、翻訳の最終的な目標は、お金ではなく、コミュニケーションそのものです。
コンビニのチェーン店の様な経済効果を狙う業界ではなく、商品のクオリティーの事をもう少し真剣に考える翻訳エージェントが増えたらと思います。

unlock(アンロック)を翻訳(ホンヤック)

皆さま、初めまして。今回こちらのメディア・センターでコラムを連載させていただくことになった、日本人ゲーム翻訳者の羽無エラーと申します。拙コ ラムでは、毎回、ビデオゲームに関連するテーマを何か一つ取り上げ、そのテーマについて、ゲーム翻訳者の一人として、またはゲーム業界人の端くれとして、 もしくは税金を納めている東京都民の一人として(?)、簡単にお話をさせていただく予定でおります。平たく言えば、ゲーム画面に向かって心に移りゆくこと を自由に書き綴るコラム、ということです。

というわけで早速、第一回のテーマである”unlock(アンロック)”についての話をしようと思います。”unlock”とは海外のゲーム内で目 にすることが多い英語であり、隠しキャラクターや隠しアイテムといった、ゲーム内で最初は使えなかったものを、特定の条件を満たすことにより「使える状態 にする」という意味で用いられる動詞です。海外ゲームが日本にローカライズされる際、”unlock”は「解除する」と直訳されることもあれば、「アン ロックする」とカタカナ英語に訳されることもあります。
前述のような文脈で使われる”unlock”は、ほんの一昔前までは海外ゲームの中でもあまりお目にかかることがなかったものの、Xbox 360のシステムメッセージで用いられて以来、徐々にゲームユーザーの間に浸透してきました。ここでいうXbox 360のシステムメッセージとは、ご存知の方も多いと思いますが、実績の取得時に表示される下記メッセージのことです。

Achievement unlocked

(実績のロックが解除されました)

上記のメッセージで”unlock”が使われて以来、Xbox 360だけでなくほかのプラットフォームのタイトル内でも、同様の文脈で”unlock”が用いられることが増えてきました。そしてそういったタイトルが 日本にローカライズされる際もやはり、「解除する」や「アンロックする」といった訳語を充てられることが多いと思います。その影響もあってか、今や日本で も、コアなユーザーを中心に「解除する」、「アンロックする」という言葉が広まってきています。

しかし私個人は、このような流れを面白いと思いつつも、”unlock”を「解除する」や「アンロックする」と安易に直訳するのは極力避けるようにしています。

まず、「隠し要素を出現させる」という意味の「解除する」は、日本のゲームの中で使われる言葉としては、さほど一般的でないように思えます。「アン ロックする」は言わずもがな、です。先ほど、「日本でも広まってきている」と書きましたが、それはあくまでユーザー間の雑談や海外ゲームの日本語版での話 であり、日本で作られた純和製ゲーム、特にコンシューマーゲームでは、この意味の「解除する」という表現はまだそれほど使われていないのではないでしょう か。意味が伝わるのであれば「解除する」や「アンロックする」を使っても差し支えないだろうと思う一方、一般的な和製ゲームの中でほとんど使われていない 表現を海外ゲームのローカライズ版でだけ用いるのは、若干はばかられる気がするのです。

それは私が、「ゲーム翻訳の理想は、海外ゲームのテキストを純和製ゲームのそれと見間違えるくらい自然な日本語に翻訳することだ」と考えているから だと思います。そんな、なんともチンケな自尊心が、”unlock”を「解除する」と訳してEnterキーを叩こうとする私の指に待ったをかけてしまうの です。

また、もう一つ理由があります。”unlock”という英単語が英語のネイティブ・スピーカーにとってごく容易なものであるのに対し、「解除」とい う日本語は日本の若いユーザー、とりわけ小学生くらいのユーザーにとっては、少し堅苦しい言葉であるように思えるのです。特に小学校低学年のユーザーの場 合、そもそも「解除」という日本語を知らない恐れすらあります。実際、広いユーザー層をターゲットに据えているタイトルで「解除」という言葉を使ったら、 監修を受けた後に違う表現に直されていた経験もあります。「じゃあお前も使ったことあるんじゃん」というツッコミはご勘弁を(笑)。

このような理由から、コアユーザー向けのタイトルでない限りは、私は”unlock”を「解除する」と訳すことはなるべく避けるようにしています。 たとえば、隠しキャラクターが出現する際の”unlock”であれば「~が使えるようになりました!(~ unlocked!)」と訳したり、隠しモードが出現する際の”unlock”であれば「~モードが遊べるようになりました!」と訳すなど、出現する隠し 要素の種類によって訳語を使い分けるようにしています。

ただ、あと数年もすれば、「隠し要素を出現させる」という意味の「解除する」が日本のゲームの中でも普通に使われるようになるかもしません。言葉は 時代とともに変わりゆくもので、英語の直訳的な表現がそのまま日本語として根付くケースもあるからです。たとえば「注意を払う」という表現。これはもとも と日本語の発想から生まれた表現ではなく、英語の”pay attention”を直訳したものであると言われています。このような欧米語の直訳表現を言語学の世界では「欧文脈」と呼ぶそうですが、この「注意を払 う」も現在では自然な日本語表現としてすっかり定着しています。

ゲーム業界は言語の世界と同等かそれ以上に目まぐるしいスピードで変化を遂げています。そのため、欧文脈の「注意を払う」のよう に、”unlock”の直訳語である「解除する」という表現が日本のゲーム業界で完全に根を下ろし、多くの純和製ゲームの中で使われる日が近いうちにやっ て来る可能性もあります。もしそうなったら、そのような表現を欧文脈ならぬ「洋ゲー文脈」と命名し、論文の一つでも書くかもしれません(笑)。その時が来 るまでは、翻訳者としてのちっぽけなプライドを守りながら、”unlock”を四苦八苦して訳し分ける日々を送り続けようと思っています。

最後に、以下の画像をご覧に入れて、第一回のコラムを締めくくりたいと思います。ご一読いただきありがとうございました。

column1_image.bmp

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筆者プロフィール
羽無エラー(はねなしえらー)
ゲームソフトの翻訳、娯楽スポーツ番組の字幕翻訳、
ゲームニュース記事の翻訳、コラムの執筆など、
多方面で活動中のエンタメ翻訳家。
和訳/英訳合わせ、約20本のゲームソフトの翻訳に携わる。
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2011年10月18日火曜日

今回はCURIOUSFACTORYの関口氏にインタビューを行いました。

欧米のゲーム市場は現在、「インディーズゲーム革命」が起こっているといっても過言ではない。ゲームをもっと自由に作れるチャンスだと、ゲームの「ジャンル」とゲームというものの定義自体をぶっこわして考え直したい小人数の素人のゲームメーカーや学生だけではなく、ベテランデザイナーやプログラマーもその「インディーズゲーム」の可能性を追求されている方が非常に増えている。
だが、日本においてその「インディーズゲーム」、いわゆる「同人ゲーム」という存在感はかなり異質である。海外においてインディーズゲームが成功しているプラットフォーム(Steam, XBLA, PSN, WiiWare等)は当然日本でもあるのですが、海外で起こっているゲームの多様化とされている源は殆ど海外の開発者から提供されていることが多い。この現象に対して要因を1つにしぼることは出来ないが、幾つか考えられる要因があります。
が、日本のゲームメーカーやインディーズデベロッパーがこの様々な流通チャンネルを把握し、インディーズゲーム市場において、日本で作られたゲームの認知度を上昇させ、成功させないわけでもありません。CuriousFactoryの関口敬文氏はそう確信されています。今回のインタビューにて、日本と海外のインディーズゲーム市場の相違、「サブカルチャー」や「オタク」との言葉の解釈する方法とそれぞれの文化の違い、そしてユーザーとパブリッシャーに対してもまだまだ未知世界のインディーズゲーム市場とその中にCuriousFactoryの位置付けと役目を取り上げて語っていただきました。
Active Gaming Media: CuriousFactoryの創設の経緯に関するお話をお聞かせいただけますか? 設立された当時の目標は? まだ開拓されていなかった市場やユーザー層をターゲットとされましたか?
CuriousFactory 関口敬文: 弊社はもともと、ゲーム、漫画、アニメ、同人、キャラクター産業といった日本のサブカルチャー・エンターテイメントの海外進出をサポートするべく生まれた企業です。日本のオタク市場の拡大とともに、海外ではサブカルチャー・エンターテイメント産業として日本のオタク文化が受け入れられるようになりました。そこで弊社が、日本の企業や同人クリエーターの海外進出のサポートができればと発足しました。同人の市場に関しては、海外ではまだまだニッチな市場で、これから発展していくマーケットではないかと考えています。ですが、日本の市場から同人クリエーターが海外に進出するには、販売経路を確保するための手続きの煩雑さ、その手続きにおける言語の壁、作品のローカライズなど、ハードルが数多く存在します。それらを弊社が一括で引き受けることで、クリエーターの皆様がもっと気軽に世界進出していただけるのではないかと考えております。

AGM: 特に海外市場の場合、インディーズゲームの売り上げと他市場やグッズの売り上げの繋がりははっきりしていませんが、他メディアや商品(アニメ、玩具等)を消費する「日本的」なゲームを好きなユーザーは意外と多いです。 どのような戦略を利用し、そしてその「繋がり」を把握しようとされていますでしょうか?

関口: 日本の商品に対する知識は、いまや海外の方も日本人と変わらないくらい得られています。戦略と言うほどの内容ではありませんが、私たちはお付き合いのあるクリエーターの方々との意見交換などで、日本のどのような作品に興味があるかといったリサーチを行なうことができます。もちろんクリエーターの方々でも、日本に対する知識が多い方も少ない方もいらっしゃいますので、偏りのない情報を収集しています。それらの情報は、日本のクリエーターの方とお話しする機会がある際に情報として提供させていただいたり、逆に日本のクリエーターの方が興味ある海外の作品の情報を、海外のクリエーターの方に聞いたりといったことで、情報交換を行なっています。

AGM: 欧米の同人ゲーム市場の現状は? 現在その市場に関してどう考えられていますか? 「潜在可能性」という点で、どのように分析されていますでしょうか?

関口: 欧米の同人ゲーム市場はまだまだ未発達の部分だと考えています。Direct2DriveやSteamといったダウンロードサイトが急速に発展しましたが、作品登録時における審査の厳しさなどを見ていると、日本のDLsite.comやDMM.comのように、同人ゲームを自由に販売できるシステムとはほど遠いといった印象があります。もっと気軽に、”制作した作品を発表し、販売できる”といった市場が開拓できれば、もっと同人ゲームや同人作品 (グラフィックやムービーなど)の市場が広がるのではないかと考えております。

AGM: ホームページ上のゲーム等に関して「日本のサブカルチャー」との言葉をよく拝見します。日本のインディーズ及び同人ゲームに対してその言葉はどんな影響を与えると思われていますか? ユーザーや消費者がCuriousFactory様の商品と連想する言葉として市場の中に御社の影響力を強化されると考えられますでしょうか? その反面、「日本のサブカルチャー」との言葉とリンクされているからこそ、一般的にゲームが好きな方に日本の同人やインディーズゲームを手にとって貰えないケースもあると思われますか? そのバランスをどう捉えられてますか?

関口: 日本の同人クリエーターの方々に『日本のサブカルチャー』という言葉がどう受け止められるかはわかりません。私たちは、日本の同人作品は、メインカルチャーではないと捉えています。日本での同人作品は2次創作物が多く、オリジナル作品は少ないと思います。この比率が逆転することで、メインカルチャーと呼んでもよい状態になっていると言えるのではないでしょうか。少し意味合いは違うかもしれませんが、たとえば、日本でサブカルチャー雑誌はあまり売れませんし、発刊されている雑誌の数も少ないです。これは『サブカルチャー』というものを日本人があまり受け入れないという感覚があるためだと思っています。一方で、欧米では『サブカルチャー』というものに対して、かなり寛容だと思われます。私たちが『日本のサブカルチャー作品』を販売するとリリースすると、興味を持っていただけるユーザーが数多く存在します。最近では、欧米でも『オタク作品』という単語で理解していただけるようですが、一般的な名称で言うとすれば『サブカルチャー作品』という言い方ではないかと考えている次第です。ただこの呼称については、『サブカルチャー作品』という言葉にこだわっているわけではないので、時代に応じて変化するモノだとも思っています。

AGM: 近年、非常に拡大した市場は何でしょうか。そして、意外なケースもありましたか?  日本のゲーム業界中の予想外の展開の影響でCuriousFactory様のビジネスモデルを変えられた時がありましたか? 3~4年前に想像されなかった現在携われている業務がありますでしょうか?

関口: 基本的な事業スタイルは変えていないつもりですが、3年ほど前から海外のクリエーターが日本で作品を販売したいというリクエストが数多く寄せられました。そこで私たちが、ローカライズと、日本の同人作品販売のWebサイトに登録するという業務を担当することで、海外のクリエーターを日本の市場でデビューさせるということを開始しました。もともと、日本のクリエーターが海外に進出して活躍してもらう手助けを……と考えていたのですが、逆に海外のクリエーターを日本に進出させるという業務も請け負うことになったといった感じです。

AGM: 国内と海外の「インディーズゲーム」というものに関する思考やイメージの相違をどう考えられますでしょうか。ビジネスやマーケティングの視点から考えるとその考え方の違いはかなり難しそうですが。

関口: 一番の違いは著作権に関する考え方ではないでしょうか。日本の同人作品は、2次著作物と呼ばれるものが大多数を占めています。これらはグレーゾーンの作品も含まれています。ただし、欧米の作品はオリジナル作品が多く、アイデアなどに優れた作品が多いと感じています。こういった権利問題の事情が絡んでいるため、日本の作品を海外に展開することはかなり難しいといった場合が多いです。ビジネスとして考えると、著作権をクリアーするためには、著作会社に対してのチェックやロイヤリティーなどが発生するため、個人レベルでの同人作品では許可を取ることすら難しい状態です。これらについては、同人クリエーターの方々の意識改革によって変化するものだと考えており、私たちがなにかアクションを起こして変わるモノだとは考えていません。現に、ASTRO PORT様などはオリジナルでクオリティーの高い作品を制作されており、Direct2Driveで販売も開始されております。このような作品が多くリリースされてくれば、日本のクリエーターの方々がもっと海外に進出され活躍される機会が増えるのではないでしょうか。

AGM: 日本の同人ゲームによく見られる「大人っぽい」内容は海外のゲームに一切存在しないというのが現状だと思います。他メディアのように幅広いジャンルやコンテンツを多様な作品にわたって共存する可能性はありますでしょうか? それを実現された場合、どんな流れで実現されると考えられていますか? そのプロセスの中にインディーズゲームの役目は? それか勇敢な大手パブリッシャーや開発会社しか導入できないでしょうか?

関口: たしかに大手パブリッシャーが関わるようなゲームでは、セクシーな表現を含む作品はほぼありません。ですが、たとえばアメリカでは表現の自由ということもあり、実写ビデオや一部PCゲームでも18禁作品やセクシーな表現がされている作品があります。また同人作品については、18禁タイトルが次々にリリースされており、弊社でも登録代行業務で扱っている作品は数多くありますので、今後成長する分野だと考えています。つまり、同人ゲームから18禁作品が広がっていくということは大いにあり得ると思われます。

AGM: 近年、プラットフォーム1つ(PC, iPhone等)で作り始めた小さいインディーズゲームがユーザーの目を惹き、そして多プラットフォーム開発となり、結局認知度が多くの大規模ゲームより上回って売り上げ的にも大成功となるケースが増えています。CuriousFactory様が携われているインディーズや同人ゲーム市場の範囲に似たような例がありますか? 日本のインディーズゲームに対してそのような現象の可能性はどう思われますか?

関口: 私たちが扱っている同人ゲームに関して言えば、PC対応のものがほとんどで、iPhoneなど携帯系ゲームはありません。携帯系ゲームに関しては販路がすでにできあがっているため、私たちの手を必要としないというところがあります。同人PCゲームに関して言えば、セールス的に成功している作品はやはりクオリティーの高い3DCGを利用した作品が多いです。同人作品ではiPhone、アンドロイド、PC、Xbox 360(XNA)といったマルチ展開をしている作品はまだまだ少数で、これからの市場ではないでしょうか。マルチプラットフォーム展開するには、クリエーターのプログラム知識などもかなり必要となってくるため、ハードルは高いと思われます。

AGM: 最近国内ゲームのみのDL Siteは日本同人ゲーム市場に浸透しようとする海外のゲームやクリエーターを招きいれ始めました。現在のステータスは如何でしょうか。多くの提供されたゲーム内容は日本同人ゲーム市場向けでしょうか? 又は、海外気味でしょうか? 基本的にSteamやDirect2Driveを通じて配信されているゲーム内容と同人ゲーム内容は殆ど違うと思いますが。

関口: 海外のクリエーターが制作する作品は、日本のプレイヤーに適しているとは言えないかもしれません。わかりやすい部分では、グラフィックデザインが一番違うと感じています。日本の”萌えキャラ”といった部分は、海外のクリエーターにはなかなか理解しづらい要素のようです。ですが、ゲームシステムや、グラフィッククオリティーの部分で言えば、日本のクリエーターの作品より優れた作品も数多く見受けられます。また”萌えキャラ”を理解しているクリエーターもいらっしゃいますので、今後もっと日本向けにカスタマイズされた作品は増えてくるのではないでしょうか。

AGM: CuriousFactory様のホームページ経由で直接販売するゲームはどう決められますでしょうか?全て、なにかしら携わられているゲームでしょうか?(ローカライズ、コンテンツ制作等)他の理由がありますでしょうか?

関口: 基本的にローカライズ依頼など、弊社にリクエストをいただいた作品を手がけています。また気になった作品についてはこちらからアプローチさせていただき、ローカライズなどをお手伝いさせていただいて、日本での販売、または海外での販売などを行なっています。

AGM: CuriousFactory様は、日本のゲームを欧米の流通チャネルに持っていくサービスを提供しています。販売店と組んで、多くの人に非常に日本っぽいと思われているゲームを、かなり違うゲームによって独占しているプラットフォームに持っていく経験は如何でしたか?

関口: 最初はまったくの手探りでスタートしましたので、売れる、売れないという想像すらつきませんでした。しかし、作品を手がけていくにしたがい、海外の作品を日本に、日本の作品を海外にと、どちらの場合でも、作品のクオリティーが高ければ、国境は関係ないということに気づきました。購入していただいているお客様も、最初は抵抗があるかもしれませんが、プレイしておもしろければ、それを正当に評価してくださっているという実感があります。それは販売本数にも表れているので、たしかな手応えを感じています。

AGM: 今まで、口コミ等で通じることでしか見つからないゲームが、メジャー流通チャンネルで購入できることに対してのプレイヤーの反応は如何ですか?

関口: Webによるダウンロード販売によって、販売数は増えていると思われます。口コミもいまや、TwitterやFacebookといったデジタルでの口コミになっていますので、情報の広がり方はさらに早く話題は一気に広まっているといった感覚です。

AGM: PC以外のプラットフォームに同人ゲームを持っていく可能性を検討したことはありますか?新しいプラットフォームの展開にあたって、どのような困難がありました?CuriousFactory様が提供しているのと同じようなゲームに取り組んでいる開発者は、従来PCのみの商品を別の顧客に持っていくことに抵抗がないと思いますか?このような展開は十分に可能と思いますか?

関口: ほかのプラットフォームへの展開は私たちは可能だと思いますが、実際のところはわからないといったほうが正しいかもしれません。私たちは作品のローカライズなどの担当であり、プログラマーでもグラフィッカーでもないので、マルチプラットフォーム展開の決定権はありません。各同人クリエーターの方が「マルチ展開をしたいので手伝って欲しい」というリクエストがあれば、いつでも協力させていただこうと考えております。

AGM: 日本の小規模で開発されたゲームが、海外のインディゲーム市場の急成長の波に乗る可能性に関しましてはどう考えられますか?

関口: 当然あると考えています。日本のクリエーターの方々は、日本のバランスの取れたコンシューマーゲームになれた方がほとんどです。そのような方たちが制作する作品ですので、クオリティーが高いものが多いと思います。ですので、欧米の市場でヒットする可能性は十分にあると思われます。

AGM: BladeEngineを提供するのは、ビジュアルノベルの開発を検討されている海外のインディーズデベロッパーを支援するかなり面白い方法です。要素が、たくさんの日本国内の人気ゲームにうまく浸透したジャンルでありながら、欧米ではビジュアルノベルは独立したジャンルとしてあまり認められていません。BladeEngineにはどのようなサポートがありますか?ここ何年かの間で、ツールの利用で日本以外の開発者にビジュアルノベルの創作増加が見えてきましたか?ツールのうまい利用で特に意外なコンテンツがありましたか?

関口: BladeEngineは、日本のゲーム制作会社にご協力いただき、提供していただいたエンジンです。コードを書くことができない人でも、気軽にADVを作っていただきたいという理由で、無料でダウンロードしていただき、自由に使っていただくという形でリリースしました。いくつかの作品はBladeEngineで制作されたようで、プログラムの改良をリクエストされたこともありました。そのリクエストを送っていただいたサークル様には、クリエーター様が考える作品の完成図にできるだけ近づけるようにと機能を追加したカスタム版のBladeEngineを提供させていただきました。その作品については、無料で公開されたようで、かなりの人がダウンロードしてプレイされたということは伺っております。

AGM: CuriousFactory様としましては、日本のゲーム市場内の他の法人と別の方法で、どれだけ市場進展に貢献する可能性を持っていると思いますか。

関口: 私たちができることは、大手の法人様であればできるようなことばかりかもしれませんが、クリエーター様との深い繋がりによって信頼を得られているものだと自負しております。今後もこのスタンスを崩さず、クリエーター様といい関係で制作を進めることで、多くのクリエーター様が海外に進出する手助けができるのではないかと考えています。

AGM: 最後に、CuriousFactory様の現在、若しくは将来の活動に関しまして、一言頂ければと思います。

関口: 海外でのマーケティング展開のご提案、海外のオタクイベントの出展登録代行、作品の翻訳作業など、今後も日本と海外の架け橋となるような業務を行なっていければと考えております。グローバルな展開をしていただくことで、クリエーター様の視野や考え方が必ず変わっていくものだと思っています。もし海外での展開にご興味があれば、ご連絡いただければと思います。
お時間を割いて頂きありがとうございました!
CuriousFactoryホームページ:
http://www.curiousfactory.com/home.php

英日のゲーム翻訳で最も多く目にする誤訳

海外ゲームの日本語版が発売されると、プレイヤーにより誤訳(Mistranslations)が発見され、インターネットのフォーラムなどを通じてその誤訳の噂が広まる、といった光景は、昨今では珍しくありません。しかし、私がこれまで多くのゲームで発見してきたにもかかわらず、不思議とインターネット上で指摘がなされていない誤訳があるのです。今回は、その誤訳に関して話をさせていただきたいと思います。

まず、あなたが英語のゲームを日本語に翻訳するとして、ゲーム中に以下の枠内のような画面があるとしましょう。
STATS Enemies Killed: 882 Items Unlocked: 65/100 Missions Completed: 37/50Points Collected: 85,578,300 Time Played: 20:30:09
上記は、海外ゲームでよくお目にかかる、”Stats”画面を模したものです。この画面のタイトルである”Stats”という英語、あなたなら何と訳しますか?

“Stats”は一見、”Status”の略語であるように見えるかもしれませんが、実はこれ、”Status”ではなく”Statistics”の略語です。”Statistics”を英和辞典で引いてみると、「統計」、「統計表」などの日本語訳が出てくると思います。”Stats”画面では、ゲーム中で獲得したポイント数や合計プレイ時間といった、ゲームプレイに関する「統計的なデータ(Statistics)」を参照することができるのです。

しかし、日本語に翻訳された海外ゲームをプレイしていると、この”Stats”が「ステータス」と訳されているケースを非常に多く見かけます。日本のゲームで「ステータス」画面というと、キャラクターの体力、攻撃力、所持アイテムといった情報を表示する画面を指すのが一般的であり、上の例のような画面のことを「ステータス画面」とは、なかなか呼ばないはずです。このことは、Googleなどで「ステータス画面」と入れて画像検索をかければ一目瞭然でしょう。そのため、”Stats”画面の”Stats”が「ステータス」と訳されていると、日本人ゲーマーとしては、いささか違和感を覚えてしまいます。

ちなみに私自身が”Stats”を訳すときは、「プレイ記録」や「プレイデータ」、または「レコード」や「戦歴」といった日本語をあてることが多いです。その辺りの細かい言い回しは、”Stats”画面で表示されている項目、およびゲームの世界観などを考慮して決めるようにしています。

ただ、この”Stats”の問題は少々くせ者で、”Stats”を「ステータス」と訳しても問題ない場合というのもあるのです。例えば、下の”Stats”画面で表示されているのは、キャラクターのレベル (Level)や体力(Health)といった情報であり、日本のゲームでいうところの「ステータス画面」で表示される情報とまったく合致するのです。こういったケースでは、”Stats”を「ステータス」と訳しても何ら問題はありません。おそらく、”Stats”を”Status”の略語だと勘違いしてしまうゲーム翻訳家が多いのは、下のような”Stats”画面も存在することが原因なのではないでしょうか。



Aeria Games社 ”Twelve Sky 2”より (http://12sky2.mmosite.com/eu/)

“Stats”を「ステータス」と訳してしまうミスは、ゲーム翻訳において、私が最も多く見かけてきた誤訳の一つです。日本でも有名な海外ゲーム、例えば10万本以上出荷されるような人気タイトルですら、このミスを見かけることがあります。

…ただ、正直に告白すると、私自身、駆け出しの頃にこの誤訳を犯してしまったことがあるのです。そのときは途中で気づき修正したので、何とか事なきを得ましたが…。そん??なこともあったため、他のゲーム翻訳家の方々にも注意喚起しておこう、などと思い、こうして筆を執らせていただいた次第であります。??